クズ彼氏の甘く危険な呪縛
名前を呼ぶ声は、地の底から響いてくるように低かった。
そして間髪いれず、

ガンッ!

重い音が響いた。
レオくんの足が、私のすぐ隣のロッカーを思いきり蹴り上げた。
扉がひしゃげ、小さな埃が空中でゆらゆらと漂った。

――その場の空気が、急速に冷えた。

大きな音で、痛む頭を上げると、そこには、目が据わっていて、笑っていないレオくんがいた。


「……あ、の」


恐怖で、数歩、後ずさった。
けど、すぐに壁に阻まれる。


「”また”、あのふたり?」
「今度は、なにやったの……」


ひそひそと周囲の生徒が囁いている。
けれど、レオくんはそんな気配を一切見ないで、私だけを見ていた。
その瞳には、苛立ちの熱が渦巻いている。


「なにしてた?」


低い声。凍りつくような。


「なんで返さねぇんだよ。……あぁ、わざと無視してた?」

「ち、ちがっ!……す、スマホの充電が……っ」


喉が詰まって、うまく言葉にならない。
咄嗟に、スマホを取り出し、見せてみる。


「ほ、ほんとうなの……!」

「使えねぇなら、こんなんいらねーだろ」


私のスマホを握りしめると、怒鳴る代わりに壁に投げつけた。


「なぁ、聞いてんの?」


震えが止まらない。涙が膜を張る。
どうすればいいのか、何を言えばいいのか、なにが正解なのかわからなかった。
また、怒鳴られる。また、前みたく乱暴に……!


「……ご、ごめっ……!?」


言い切る前に、レオくんは背中を向けて歩き出す。
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