クズ彼氏の甘く危険な呪縛
「れ、レオくん……?」


どんどん遠ざかっていく背中に、焦りが浮かぶ。
留まったほうがいいのか、追いかけたほうがいいのか。
その答えが出る前に、私の足は動いていた。


「まって……!!お願い!」

「……」


ちっとも縮まらない、歩幅を追いかけて、


「レオくん……!」

「……」


何度、声をかけても振り向かない背中を、追いかけて、


「は……っ、止まって……。お願いだから」

「止まって、どーすんの?また謝る?」


やっとレオくんが立ち止まった。
でも、こっちを睨む目は鋭いまま。
私の口から出たのは――


「ご、ごめんなさい……。私あの、」


はっ、と笑いとも、ため息ともつかない音が漏れる。


「謝ればなんとかなるって、ほんとに思ってんの?」


唇の端を歪めて、ゆっくりと私の顔を覗き込む。


「なぁ。……つまんねぇ女」


一瞬、息が止まった。
自分でも情けないほどの音が、喉から漏れる。

レオくんは、興味なさそうにまた背を向けた。

やだよ、行かないで……。
口には出せなかった。ただ、伸ばした手がふらつく。

頭が割れるように痛い。
視界の端に、黒い点が滲む。
足元がふわふわして――もう、立っていられなかった。
身体が崩れるように、床に倒れ込む。


「……あ?」


去りかけたレオくんが、気づいて振り返る。

その声を最後に、私の意識は、暗闇に落ちた。
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