クズ彼氏の甘く危険な呪縛
そのまま、彼の胸元へ額を押し付けると、レオくんは小さく笑った。


「……なぁ、ヨリ」

「うん……」


私の名前を呼ぶだけで、何も語らない彼の背中を撫で続ける。
少しでも不安が和らぐように。
怒りがおさまるように。
彼の震えが、落ち着くように……。


「もう、大丈夫だよ」


そのまま、ふたりの間に言葉のない時間が流れた。

レオくんの呼吸はまだ乱れているけど、少しずつ落ち着いてきてる気がする。
私の指が背中を撫でるたびに、まるで確かめるように、彼の体が小さく震えた。

血の匂いが鼻につく。床に転がる誰かのうめき声が遠くで響く。
でも、私たちの周りだけが、不思議なくらい静かだった。


「……レオくん」


名前を呼んでも、彼は何も言わない。
ただ、私の髪に顔をうずめて、静かに息を吐いた。

私たちだけが、壊れた世界の真ん中で取り残されているようだった。
このまま時間が止まってしまえばいいのに。
そんなことを少しだけ、思ってしまった。


「……疲れた」


耳元でぼそっと、レオくんが呟いた瞬間──

廊下の向こうから、ばたばたと走る足音が近づいてきた。
そして、ガラッと、扉が大きく開き


「おい!なにしてる……!?」


先生たちが駆け込んできた。
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