クズ彼氏の甘く危険な呪縛
私の声に、レオくんがゆっくりと振り向いた。
顔も、制服も、拳も──血でぐしゃぐしゃだった。


「ヨリ」


名前を呼ばれた瞬間、私はレオくんへと駆け出していた。
逃げなきゃ、なんて危険信号はもう鳴らない。
それに、行かなきゃ、レオくんが壊れてしまう。今の彼にはそんな危うさがあった。


「レオくん……もう、いいんだよ」


原型もわからないくらい殴られた男子は、うめき声さえ出せずに、ぐったりしていた。
レオくんはその顔をちらりと見たあと、やっと拳をほどいて、ゆっくり立ち上がった。

そのまま、ふらふらとおぼつかない足取りで私へと近づき、血まみれの両手で私の頬を包んだ。


「……ヨリ、俺さ」


冷たい。ベタベタで、鉄の臭いがする。不快感に眉を寄せる。
だけど、レオくんの目は、何かを求めるようにゆらゆらと揺れていた。


「どうしたの?」


正解かわからずに、そっとレオくんの背中へと手をまわした。
背中は汗で濡れていて、ひどく冷たかった。
震えていたのは──どっちだったのだろう?

でも、抱きしめる。
レオくんだけが、私を、愛してるって言ってくれたから。
< 33 / 138 >

この作品をシェア

pagetop