クズ彼氏の甘く危険な呪縛

冬のある日

昼下がりの空き教室。

膝の上で寝息を立てるレオくんの頭を、私はそっと撫でていた。
染めた髪がスカートから出た足にかかって、くすぐったい。だけど、緩やかな拘束が心地よかった。

肩が少し震えていたのを見た私は、自分のブレザーを脱いで掛けてあげる。

暖房がきいてない冬の教室は冷え込んでいるのに、不思議とレオくんの寝顔を見ていると温かい気がした。――彼がそばにいるだけで、私はまだ生きていてもいいんだ、って思わせてくれる。

卒業を控えているこの時期に学校に来る生徒は、私たち以外いなく不気味なほど、しん……としていた。その静けさが心地よくて、いつしか私も目を閉じていた。


「ヨリ、起きろ」


肩を揺すられ、はっと目を開ける。少しぼんやりした頭で、目の前にいるレオくんを見つめた。

気がつけば私までうたた寝していたらしい。


「ご、ごめん……レオく、……レオ」


まだ慣れない呼び捨てに舌がもつれる。でも今日のレオくんは機嫌がいいのか、片方だけ口の端を上げるだけで責めたりしなかった。


「腹減った」


たった一言。でもそれがなんだか嬉しかった。こうして隣にいてくれて、話してくれる。
それだけで、胸の奥があたたかくなった。


「……お昼ご飯」


小さくお腹が鳴った。つられて自分も空腹だったことを思い出す。


「外行こうぜ」


それだけ言って、レオくんは立ち上がる。いつだってそう。レオくんは私を待たない。その背中を、私は慌てて追いかけた。

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