クズ彼氏の甘く危険な呪縛
――でも。

今夜だけは目を逸らすことができなかった。

珍しく帰ってきたレオと眠っていた夜。

ピコンと言う間抜けな音と一緒に、スマホが光った。

嫌な予感に汗が一筋伝うまま、恐る恐るスマホに手を伸ばした。伸ばしてしまった。

こんなことしちゃいけない。そんなことわかってる。――本当に?
だってレオは私のスマホを勝手に見るのに?
……それでも、こんなことがバレたら幻滅される。怒鳴られる。嫌われる。

心臓の鼓動音が頭に響く。
手のひらに汗がにじむ。
指が震える。


……いっそ外れていてほしい、そう思ったのに無慈悲にもロックは解除された。

ロック画面とメッセージアプリのパスワードは当たり前だけど違った。

日頃、レオはスマホを見られるのを嫌った。それなのに、私は簡単に覚えてしまった。

どうして、私、覚えられたんだろう?
――まるで、覚えさせられたみたい。

その可能性を考えてゾッとした。違う、そんなこと……と思ったのも束の間。
――たくさんの知らない女の人とレオのやり取りが目に映った。
そして、ひとり見つけた。


『明日・夕方・ホテル街』


全部は覚えられないので、短い単語を必死に頭に叩き込む。

そこに行ったら……私はどうなるんだろう。

少しだけ冷静になった頭が問いかけてくる。

でも考えても答えは見つからない。
……行かなくてもいい。行かなかったら、このまま仮初の幸せの中生きていける。
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