クズ彼氏の甘く危険な呪縛

カワイイ彼女

「お前、ほんとちょろいな」


薄暗いホテルの一室。
煙草に火をつけながら、ヘッドボードにもたれて女の顔を見下ろす。
シーツにくるまった女は、小さく笑いながら俺の足元に頭を預けた。


「……あんたがうまいからでしょ」

「ハハッ、そういうとこ」


適当に返しながら、俺の意識はむくれる女じゃなく、もう別の場所に向いていた。

ヨリの顔が浮かんで、目の前の女が薄っぺらく見える。

あいつだったら、こんなとき絶対無言で目を逸らすんだよな。
傷ついたように……でも、それを俺にばれないように唇を噛んで、涙を浮かべて、少しでも触れたら涙を零して。
最中も痛がるくせに、俺に”嫌われたくない”からって我慢して――バカみてぇ。

ヨリの怯えた目。
触れるたびに震える肩。
それでも俺を嫌いになれない、あの愚かさ。

思い出すだけで、息が詰まるような、苦しいような……あの感覚。
自分をコントロールできてないみたいで苛立ちを感じた。けど同時に、笑いもこみ上げる。


「……ハッ」


急に笑った俺に、女が怪訝そうな目を向ける。
それでも、唇だけはしっかり寄せてきた。
受け止めながら、ふと思った。

こいつ、楽だな。
褒めれば馬鹿正直に従うし、俺が機嫌悪くても気にしねぇ。
――でも、なんか違うんだよな

……薄っぺら。ヨリとは比べもんになんねぇ。
< 59 / 138 >

この作品をシェア

pagetop