クズ彼氏の甘く危険な呪縛

風邪

一緒に暮らすようになって、知ったことがある。

レオは体調を崩すと、決まって不機嫌になる。

不機嫌、なんて言葉じゃ生ぬるい。
冷たい目で睨まれて、舌打ちの音が何度も部屋に響く。
話しかけるな、触るな、邪魔するな――そんな無言の圧が空気を支配する。


「……熱、あるんでしょ?」


問いかけても返事はない。

代わりにレオは、うんざりしたようにソファへ倒れ込んで、毛布を蹴り飛ばした。

……ああ、やっぱり。

だからといって、放っておいたら怒るくせに……。

過去にも一度だけ、一緒に暮らし始めてすぐの頃、レオが熱を出したことがある。

そのときは焦ってしまいレオの世話を焼いた結果、普段の比じゃないほど当たり散らかされたので、私がいないほうがいいと思って部屋に戻り引きこもった。

でもその結果、レオの不機嫌は最高潮になり、暴れ回りリビングはひどいありさま。体調は悪化し、病院へ連れ込んだ。
数日で治るはずの風邪は、長引きその間私も仕事に行けなくなるというよくない事態になった。

――だから、わかってる。
放っておいたらもっと悪化する。
優しくしても怒る。突き放しても怒る。
正解なんてない。

でも――。

私はもう、あの日みたいな後悔はしたくなかった。
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