クズ彼氏の甘く危険な呪縛
台所で、おかゆを作る。
あまり余裕のある生活ではないので、卵だけのおかゆ。
それでも、すこしでも食べやすいように、箸でゆっくり卵を混ぜながら、小さく息を吐く。

優しくしても怒るのに、こうして台所に立ってしまう自分が情けない。

それでも――やっぱり好きだから。
レオが辛そうにしている姿を、放っておくことはできなかった……。


「……レオ、これ……っ」


声をかけながら差し出した瞬間、レオは手を払って茶碗をひっくり返した。

おかゆが床に飛び散る。
茶碗がひび割れて、カラリと乾いた音を立てた。


「気分じゃねぇんだよ」


掠れた声すら苛立っていて、少しだけ傷つく。


「火傷は、してない?」


心配でかけた言葉も、


「うるせぇ」


そう一蹴された。

けれど、こんなことではめげなかった。
前はもっとひどかったから……これはまだいい方。

そう言い聞かせる。

薬を持っていき、お茶も差し出した。
濡らしたタオルをそっと額に乗せようとすれば、手首を払いのけられた。


「触んな」


だめだ……うまくいかない。

やることすべてが裏目に出る。

優しさすら拒絶されて、もうどうしたらいいのかわからなかった。

それでも、レオのそばを離れるという選択肢は私にはなかった。

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