ネオンー教えてくれたのは"大人な恋"ー


その日の夜__



営業が終わるのを私は静かに待ってた

周りのスタッフが帰っていくのを横目に
裏口の前に立ってると
ほどなくして悠が出てきた

「お疲れ」

「…お疲れさま」

夜風が少し冷たかったけど
悠の隣に並ぶだけで
それも全部心地よく感じた

 

ふたり並んで静かに歩く

話す言葉は少ないけど
こうやって隣にいるだけで
胸の奥がじんわり熱くなる

 

ふと私は
前からずっと胸の中にあったことを口にしてた

「ねえ…悠」

「ん?」

「卒業したらさ──」

「……」

「そしたら堂々とできるかな?」

小さく呟いたその声が
夜の静けさに溶けていく

 

悠は少しだけ足を止めて
ゆっくり私を見た

「ああ…玲那、もうすぐ卒業だもんな」

「うん…」

私は自分でも驚くくらい照れくさく笑った

「あと少しだよ?高校生活なんて」

「……」

悠は優しく髪を撫でながら
ゆっくり言葉を選ぶみたいに答えた

 

「堂々と…か」

「……うん」

「きっと今よりは、少しは楽になるかもな」

 

私はその答えを聞いただけで
胸の奥がじわっと熱くなった

まだ簡単じゃないこともわかってる
でも少しずつ先が見えてきたような気がして

 

悠は軽く私の手を握りながら
低く小さく呟いた

「早くその日が来てほしいよな」

「…私も」

 

夜の静かな街を
手を繋いだままふたりで歩き続けた

まるで
誰にも知られない世界の中に
ふたりだけでいるみたいに
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