月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「お母さん。」

「なに?やっぱり包丁の方がいい?」

「心配かけてごめんね。でも、もう心配しないで。」

「えっ。」

そして私は布団を被って、また眠りについた。

お母さんはしばらくフライパンを持ったまま、ベッドの脇にきたけれど、私が寝たと思ったのか、部屋から出て行った。

お母さん、私、絶対生きて帰ってくるからね。

そんな訳の分からない誓いを、階段を降りて行く母親にした。


目の前が暗いせいか、視界がボーッとしてきて、私は再び揺れ続ける駱駝の上に来ていた。

「起きたか?」

私を拐った男は、顔半分下を布で覆っていた。

けれどその見えている目だけで、この男がイケメン風だと言う事が分かった。

「どこまで行くの?」

「安心しろ。もうすぐ着く。」

冷たい感じ。

同じイケメンのジャラールさんや、ハーキムさんとかとは大違い。

「ほら。着いた。」

感情が込もっていない、単調な言い方で、その男は駱駝を止めた。

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