月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「クレハ。」

ジャラールさんが、私の側に寄ってきた。

「有り難う。クレハのお蔭で、ザーヒルに国を奪われずに済んだ。」

「ううん。私は何もしていない。みんな一人一人が、この国を守ったのよ。」

ジャラールさんは、優しく微笑むと、突然私の目の前に膝を着いた。


「ジャラールさん?」

「クレハ、私の気持ち聞いてほしい。」

ジャラールさんが私の手を取ると、周りは静まり返った。

「クレハ、私の妻になってくれないか?」

「えっ!?」


つ、妻!?

えっ、ちょっと待って!

ネシャートさん、側にいるんですけど!?


「もちろん。クレハにはクレハの世界がある。一時は自分の世界に帰るべきだ。それを引き留めはしない。」


私の世界。

この世界ではない、現実の世界。


お父さんやお母さん、弟。

ときわや、光清がいる世界。


「だがいつか、クレハがこの世界で、私と一緒に暮らしたいと願ってくれたら、その時は……」

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