月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「どうしました?」

ハーキムさんは、平然とオレンジジュースを注いでいる。

「どうしましたもないですよ。いつもと口調が違うじゃないですか。」

「ははは。それはもう、王子のお妃様ですからね。」

ハーキムさんに言われると、なんだか嫌みに聞こえる。

「そんな大それた事じゃないです!」

ジュースの入ったコップを受けとると、ハーキムさんの指が、私の指と重なった。

「ハーキムさん?」

「……ホントに、大した者ですよ。あなたは。」

そっと手を離したその仕草が、名残惜しそうだった。

「ハーキムさんがいたからですよ。」

「えっ?」

「ジャラールさんの他に、ハーキムさんもいたから、この世界でも、やっていけるんです。」

それは別にお世辞でも、気を使ったわけでもなく、私の素直な気持ち。

「それは光栄です。」

「また、そんな言い方。」

拗ねるように横を向くと、ハーキムさんの指が、口許に触れた。

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