月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「失礼。ジュースが少しついていたものですから。」

ジュ、ジュースが口に!!

恥ずかしい~!!

「有り難うございます。」

見られたのが、ハーキムさんでよかった~。

「いえ。」

ハーキムさんは、頭を下げるとどこかへ行ってしまいそうになった。

「ハーキムさん?」

「はい?」

振り返ったハーキムさんに、言葉がない。

「えっと……」

何か言わなきゃいけないのだけど、こんな時に限って何もない。

「あっ、いや……何を頼むんだったかな。忘れちゃった。」

そうそう。

ここは誤魔化そう。

「フッ。」

えっ?笑った?

ハーキムさん、笑った?

「大丈夫ですよ、クレハ。」

「へっ?」

「私はどこにも行きません。ずっと側におります。」


なんだ、この見透かされている感じ。


「それは、よかったです。」

「それでは。」

また仕事に戻って行くハーキムさんの背中が、今度は寂しく感じなかった。

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