月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「な~んてね。そんな顔しないで。困らせるつもりはないんだ。」

そこには、おちゃらけたいつもの光清が。

「うんうん。これでいいんだ。」

無理に笑っている光清が、すごくいい人に見えた。


なんでこんないい人を傷つけてまで、私はジャラールさんが好きなんだろう。

私を好きだって、言ってくれているのに。

ジャラールさんには、ネシャートさんって言う、婚約者がいるのに。


その答えは、私の中にあった。

好きになった人の側にいたい。

好きになった人に好きだって、言ってもらいたい。

好きだって、言ってくれた人じゃない。


自分がこんなにも好きだって思える人に出会えるなんて、奇跡。

だから、その奇跡を信じたいんだ。

深い目をした褐色の王子様。

ジャラールさんを。


私は自分の想いを、胸にしまいこんだ。

それこそが、何にも勝る宝石だと、思ったから。

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