月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
中学生で両想いかい。

一番羨ましいパターンじゃないか?

「あまりにも、上手くいきすぎたのよ。」

「どういう事?」

「好きになって、すぐ付き合えたって事。」

う~ん。

それがなぜ、上手くいきすぎなのか、私には理解できない。

「恋ってさ。ちょっと手こずる方がいいのよ。」

「手こずる?」

「ああ、私って嫌われてるのかな。ああ、他に好きな人がいるみたい。ああ、告白しても断られそう。それが多い程、実った時の喜びは大きくなるの。」

相変わらずときわの恋愛論は、参考になりすぎる。

「だから、あまりにも早く実りすぎて、少々上手くいかなくなったら、“他の人ならもっと上手くいくんじゃないか”って、思ってしまったの。二人でその実を、育てていかなきゃいけないのにね。」

そう言ってときわは、私の方を向いて、少しだけ大人びた表情を見せた。

「だから、紅葉も。ジャラールさんとの恋が、万が一実った時は、二人で育てていくんだよ。」

万が一ってところが、引っ掛かったけれど、とりあえず私は、大きく頷いて見せた。

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