【サク読みAI小説】独白アイドル〜幕が降りたあとで〜【アイドル×少年×短編】
グループ結成から半年。
夏休みを使って、単独ライブが決まった。
箱は小さいが、公演数は21。
研修生グループとしてはトップの数字だった。
公演数の多さに、リーダーの元村翔の声は少し上ずっていた。
ツアースケジュールが印刷された紙を手に取ると、
裏面には演出プランとセトリ案。
照明の色、立ち位置、煽りのパターンまで書かれていた。
(単独ライブをやれるなんて!)
「もっと、声出せるかー!」「俺たちと夏、楽しもうぜ!」
「ぼくらの成長、見守っててください!」
「今日は俺の彼女になった気分で楽しんでね〜!」
「最後まで、俺らのステージを焼き付けてくれ!」
ハコは都内の小さなライブハウス。
ステージに立つと、照明の熱気とペンライトの光が壁のようにぶつかってくる。
声を張ると、返ってくる歓声の厚みに一瞬たじろぐ。
けれど、パフォーマンスで引き込み、MCで場を沸かす。
周りのメンバーの声のトーン、間の取り方、観客の反応
——全部を目で追い、呼吸を合わせる。
紫のペンライトは、やっぱり一番少なかった。
でも、それを振ってる人の顔がよく見えた。
笑ってくれていた。目が合って、頷いてくれていた。
それだけで、十分だ。
「俺らという伝説の始まり、しっかり見届けてくれよな!」
ステージの中央でそう叫んだ瞬間、
観客の反応に、確かな“熱”が混ざっていた。
あとで見返したSNSには、
「また平沼が調子に乗ってるwww」なんて書かれていた。
“ビッグマウス沼”。
ファン御用達の黒背景に白文字の掲示板では、
妙なあだ名が付けられていた。
悪口のつもりかもしれないけど、
結構気に入っていた。
俺は浮かれたいたのだ。本当に。
手を振れば、反応が返ってくる。
ファンサで泣き出す女の子すらいた。
(くるしゅうない、くるしゅうない。
もっともっと、俺を求めろ)
舞台袖に戻ると、息が切れている。
自分の心臓の音が、耳の奥で響いていた。
その音が、まだ“上を目指せ”と教えてくれるようで、少し笑った。
教室でプリント配ってるだけの人生じゃ、こんな音は聞こえない。
気分は完全に、王様だった。
学校のやつらは、どんなにスカしてエリートぶったて、
こんな気持ち知らないまま死んでいくんだろう。
(つまんねえ人生だなあ、てめえらのは)