【サク読みAI小説】独白アイドル〜幕が降りたあとで〜【アイドル×少年×短編】

第3話:Collapse, despair

グループは順調に人気を伸ばして、
SNSのフォロワーも日に日に増えていった。
そして19歳の夏にはアリーナツアーが決まり、空気が一変する。

「これ、もしかして……」

ファンの間で、ささやかれる声。
デビューが来るかもしれない。

もちろん、俺もその気でいた。
ツアーが終われば、きっと正式発表がある――と。

けど、なかった。
いつまで経っても、何も起きなかった。

その間に、他の研修生グループがデビューを果たした。
けど、どれも俺たちより年上ばかりのグループだったし、
順番がまだ回ってこないだけに違いない。

だったらその間に、もっと力をつければいい。
作詞もしたし、作曲にも挑戦した。
振り付けも考えたし、ラップにも手を出した。アクロバットもできるようになったし、ローラーもものにした。
ファンサは全力。
自分の担当じゃないファンにも、目が合えばちゃんと手を振った。
ブログに載せる自撮りも投稿もぬかりなく。

そして、どんなときでも楽しげに。
“努力してます感”は死んでも出さなかった。
だって、そんなのは二流のすることだから。

そんな毎日を、3年。
結局、デビューの話は一度も来なかった。

風向きが、変わってしまったのだ。

事務所の大きなスキャンダルが公になり、
俺たちを取り巻く情勢は一気に不利になった。

経営陣は総とっかえ。
研修生のグループはひとつ残らず白紙に戻された。

そして、そこにーー俺はいなかった。

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