痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 襲ってくる感情がある。 

 それは”悲しい”という気持ちだった。痛みの中に悲しみが含まれるとまた痛い。

 恋なんかろくにしたことがないのだ。
 だからこの胸の痛みなど知らなかった。失恋するとこんなに胸が痛くなるのかと、百合は初めて知ったのだ。


「気分悪いとかないですか?」

 背後から響く甘い声に首を横に振った。返事を態度で示したのは言葉を発することができなかったからだ。

「……席、倒しますね」

 椅子が動いて体が倒れ始める。視界が空を仰ぐほど焦る思いがあった。

 このままだと三嶌に表情が丸見えだ……百合はそう思って口を開いた。

「タオル……してほしいです」

「……わかりました、じゃあ失礼しますね」

 白いタオルで視界が奪われる。

 これで三嶌に見られることはない、そして自分も三嶌を見なくて済む。それにホッとしてまた胸はキュッと痛む。

 目が合うなんかとてもじゃないが無理だった。

 三嶌を見たらきっと、好きが止められなくなる……百合はそう思った。
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