痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 百合の次の予約を楽しみにしていた三嶌だが、思わぬアポなしの患者に気持ちが振り回されゲンナリすることになる。

 矯正治療を始めた黛という患者は熱烈なアプローチを仕掛けてくる。医師と患者という関係性と自費治療を率先して行われる手前無下にも出来ずいつも笑顔で対応するが三嶌は全く黛に興味がなかった。なんならとても迷惑に思っている。自費治療をしてくれるのはありがたい話であるが、処置にかける時間を思うとめんどくさいことこの上ない、と感じていた。

 その黛が突如現れて、受付を覗けば百合と肩を並べて座っているではないか。桃瀬はそれにマネキンの様な笑顔を張り付けて無駄にニコニコしつつも自分を思案しているのがわかる。

 それを感じ取りつつも、待合の光景を見て三嶌は思う。

(ああ……可愛いロップイヤーの傍にハイエナが座っている……)

 食われやしないだろうかと心配にさえなる。さっさとこの下心しか持ち合わせていない患者を帰さねば、三嶌はそう思うのだった。
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