痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
「百合ちゃん、お昼しよー」

 冴子に声をかけられて事務所のデスクでお互い持参しているお弁当を広げた。百合はたいした料理は出来ない、どちらかというと手先の不器用な人間である。それでも自炊はする。単純にコスパ重視のためだ。
 仕事に持参しているお弁当はおにぎりとスープジャーのみ。毎日変わり映えのしないメニューだがさほどこだわりもないので同じ物をもしゃもしゃと食べている。
 一方の憧れる先輩・冴子はいつも器用に弁当を詰めている。「昨夜の残り物だよ〜」などと笑って言うあたりデキる女感がすごい。百合にとっては弁当が作れる=いい女方程式が簡単に出来上がっていた。

「昨日から彼氏が出張でいないから手抜き〜」

 そう言って開けた弁当はどこが手抜きなのだろう? と思うオムライスである。

「ごちそうです」

「そう? 残りのご飯でウインナー切ってチンして混ぜて卵被せただけだよ〜」

 デキる女はサラッとなんでも言う。
 そんなデキる女、冴子は告白などしたことがあるのだろうか。百合は悶々して、悶々しすぎて思わず聞いてしまった。

「冴子先輩は今の彼氏さんとはどうやってお付き合いが始まったんですか……?」

「え」

 百合の質問に冴子が固まった。
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