痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
After
 百合は考えていた。

(私さ、先生にちゃんと告白ってしてる?)

 治療中(しかも抜歯直後)にいきなりキスされて、三嶌に告げられた言葉。

 ――出会った時から決めてた。

(出会った時……って、いつ?)

 まさかあの予約もせず飛び込んだ休診日のあの初日を言っているのだろうか? 自分があの日三嶌に惹かれるようななにかをした覚えが一切ない百合は三嶌の言葉が全く信用できずにいた。

 そして自分はたいした思いも伝えないまま三嶌と会い(あくまで治療)なんだか激しいキスなどされてまたろくな言葉も言えぬままである。

(わ、私も! 私からも先生に思いを伝えないとっ!)

 百合は乙女の告白の覚悟を決めた。

 しかし、告白などしたことのない百合である。漫画やアニメではヒロインが告白するシーンはたくさんあるもののそれにはやはりシチュエーションもあるわけで。

 告白だけを切り取っても参考にはならない。それまでの過程があり告白に導かれていくのが大半だ。
 百合は告白部分にだけスポットを当てているのでいかんせんイメージがつきにくい。

(いきなり好きです! って変だよね。学生みたいに呼び出して校舎裏とかで好きです! とかしないしさ……大人ってどうやって告白するの?)

 季節的にバレンタインでもない。季節イベントにかませられることもないためにやはりイベントを自分で作るしかないのか。

 百合は告白ひとつでうんうんと頭を悩ませ始めた。
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