痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 鼻息荒く問いただす百合を宥めたら冴子は少し落ち着いた。話を聞く限りでは百合と相手の現状がいまひとつ見えない。

「えっと……付き合おうって言われた?」

「……言われてません」

 ――君は僕のもの。

 それは言われたが、付き合おうではない。

「好きは言ってもらった?」

「……言われてません」

 ――出会った時から決めてた。

 そうは言われたが、好きとは言われてない。

 自分は初日から三嶌に何かしらを決められていてもう口の中は三嶌のものになり、そのうち心も身体も支配されて三嶌のものになるようだが、それは果たしてどのような関係なのか。

 百合はますます困惑する。

「百合ちゃんから好きは?」

「……言ってません」

「……どういう関係なの? ふたりは今」

「わかりません」

「……」

 ふたりして見つめ合いながらしばし沈黙。

「と、とりあえずご飯食べよ! 食べながら話そう、ね!」

 冴子がスプーンを持ち出してオムライスを突くので百合もおにぎりをハムハムと食べ始める。

「えっと、出会ってどれくらい?」

「……三週間ほど前?」

「三週間!? すごく最近!」

 冴子がオムライスを噴き出した。

「一目惚れしちゃった!?」

「……一目惚れ?」

 百合は初めて三嶌を見た時どう思ったか……あの日を思い返してみるものの……。

(ヤブ医者だと思った)

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