君と紡いだ奇跡の半年
客席の熱気がステージにまで伝わってくる。
ライトの下、マイクを前に立つ俺の心臓は激しく高鳴っていた。
でも、不思議と怖さはなかった。
ここまで来れた——それが何よりの奇跡だったから。
「今日は、来てくれてありがとう! 俺たちの集大成を、全部届けます!」
マイク越しに叫ぶと、大きな拍手と歓声が返ってきた。
真がベースを構え、紗希がキーボードの前に座る。
「行こう!」
真の合図で演奏が始まった。
イントロのリズムに合わせて、客席の手拍子が揃っていく。
俺たちが作り上げた新曲は、この半年の全てを詰め込んだ楽曲だった。
『限られたこの時間を——君と紡いだ奇跡の日々を』
歌いながら、胸が熱くなる。
紗希の透き通ったコーラスが響き、真の力強いベースが支えてくれる。
音楽が、空間を満たしていく。
(ここまで、よく来たな……)
感極まりながらも、最後のサビへ——
『終わりが来ても 消えない想いがここにある』
ラストのコードが鳴り終わった瞬間、大歓声と拍手が体育館に響き渡った。
涙が込み上げるのを堪えきれず、俺はゆっくりと深く頭を下げた。
「——ありがとう!」
*
楽屋に戻ると、俺たちはしばらく無言で顔を見合わせたまま、泣き笑いしていた。
「最高だった……」
紗希が目を潤ませながら言う。
「マジで全力出し切ったな」
真も目を赤くしながら笑う。
俺は二人に向き直って、震えそうになる声を押し出した。
「……二人とここまで来れて、本当に幸せだった」
「何言ってんだよ。まだ終わってねぇだろ?」
真が言葉を重ねる。
「うん……これからも一緒に音楽続けよう?」
紗希も優しく手を伸ばしてきた。
俺はその手をぎゅっと握り返した。
「もちろんだよ——最後まで、絶対に」
けれど、心の中では知っていた。
(次に待っているのは——本当に、最後の時間だ)
それでも俺は、最後の奇跡を信じていた——。