君と紡いだ奇跡の半年




 客席の熱気がステージにまで伝わってくる。

 ライトの下、マイクを前に立つ俺の心臓は激しく高鳴っていた。

 でも、不思議と怖さはなかった。

 ここまで来れた——それが何よりの奇跡だったから。

「今日は、来てくれてありがとう! 俺たちの集大成を、全部届けます!」

 マイク越しに叫ぶと、大きな拍手と歓声が返ってきた。

 真がベースを構え、紗希がキーボードの前に座る。

「行こう!」

 真の合図で演奏が始まった。

 イントロのリズムに合わせて、客席の手拍子が揃っていく。

 俺たちが作り上げた新曲は、この半年の全てを詰め込んだ楽曲だった。

『限られたこの時間を——君と紡いだ奇跡の日々を』

 歌いながら、胸が熱くなる。

 紗希の透き通ったコーラスが響き、真の力強いベースが支えてくれる。

 音楽が、空間を満たしていく。

(ここまで、よく来たな……)

 感極まりながらも、最後のサビへ——

『終わりが来ても 消えない想いがここにある』

 ラストのコードが鳴り終わった瞬間、大歓声と拍手が体育館に響き渡った。

 涙が込み上げるのを堪えきれず、俺はゆっくりと深く頭を下げた。

「——ありがとう!」



 楽屋に戻ると、俺たちはしばらく無言で顔を見合わせたまま、泣き笑いしていた。

「最高だった……」

 紗希が目を潤ませながら言う。

「マジで全力出し切ったな」

 真も目を赤くしながら笑う。

 俺は二人に向き直って、震えそうになる声を押し出した。

「……二人とここまで来れて、本当に幸せだった」

「何言ってんだよ。まだ終わってねぇだろ?」

 真が言葉を重ねる。

「うん……これからも一緒に音楽続けよう?」

 紗希も優しく手を伸ばしてきた。

 俺はその手をぎゅっと握り返した。

「もちろんだよ——最後まで、絶対に」

 けれど、心の中では知っていた。

(次に待っているのは——本当に、最後の時間だ)

 それでも俺は、最後の奇跡を信じていた——。
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