君と紡いだ奇跡の半年
卒業式当日——
穏やかな春の光が差し込む体育館。
式が進む中、俺は壇上で卒業証書を受け取った。
拍手の中、父さんと母さんが涙ぐんでいるのが見えた。
(ここまでこれた——奇跡みたいな半年だった)
式が終わり、クラスメイトや先生たちと写真を撮り、言葉を交わす。
みんな笑顔で、卒業の喜びに満ちていた。
俺も、心からその輪の中にいられることが嬉しかった。
でも、同時に胸の奥には静かな覚悟もあった。
(俺の時間は——本当に、あとわずかだ)
*
その夜、最後の打ち上げが開かれた。
みんなで大騒ぎしながら笑い合い、未来の話に花を咲かせた。
「大学でもバンド続けたいなー!」
「お前らなら絶対プロになれるって!」
冗談まじりの声が飛び交う中、俺は静かに紗希と真の顔を見つめた。
(——ありがとう。ここまで俺を支えてくれて)
*
深夜——
打ち上げが終わり、紗希が帰り道でふいに歩みを止めた。
「……湊、少しだけ話してもいい?」
「もちろん」
公園のベンチに腰掛ける。
夜桜が風に揺れ、街灯の下で幻想的に輝いていた。
「私ね……」
紗希の声が少し震えていた。
「湊のこと、ずっと好きだったんだ」
その言葉に、胸が強く締め付けられる。
紗希は涙を堪えながら続けた。
「でも……湊が病気のこと隠して頑張ってたのも、全部知って……私、何もできなくて、悔しくて……」
「紗希——」
俺はそっと紗希の手を握った。
「ありがとう。俺も……本当はずっと紗希が好きだった」
紗希の目に大粒の涙が溢れた。
そして、そっと俺の肩に寄りかかってくる。
「……ねえ、湊。まだ……もう少しだけ、そばにいさせて」
「もちろんだよ。最後の一秒まで、一緒にいよう」
夜桜の下、そっと肩を抱き寄せたまま、俺たちは静かに寄り添い続けた——。
こうして俺の『戻った日』の半年間は——ゆっくりと、静かに終わりへと近づいていく。