君と紡いだ奇跡の半年


 卒業式当日——

 穏やかな春の光が差し込む体育館。

 式が進む中、俺は壇上で卒業証書を受け取った。

 拍手の中、父さんと母さんが涙ぐんでいるのが見えた。

(ここまでこれた——奇跡みたいな半年だった)

 式が終わり、クラスメイトや先生たちと写真を撮り、言葉を交わす。

 みんな笑顔で、卒業の喜びに満ちていた。

 俺も、心からその輪の中にいられることが嬉しかった。

 でも、同時に胸の奥には静かな覚悟もあった。

(俺の時間は——本当に、あとわずかだ)



 その夜、最後の打ち上げが開かれた。

 みんなで大騒ぎしながら笑い合い、未来の話に花を咲かせた。

「大学でもバンド続けたいなー!」

「お前らなら絶対プロになれるって!」

 冗談まじりの声が飛び交う中、俺は静かに紗希と真の顔を見つめた。

(——ありがとう。ここまで俺を支えてくれて)



 深夜——

 打ち上げが終わり、紗希が帰り道でふいに歩みを止めた。

「……湊、少しだけ話してもいい?」

「もちろん」

 公園のベンチに腰掛ける。

 夜桜が風に揺れ、街灯の下で幻想的に輝いていた。

「私ね……」

 紗希の声が少し震えていた。

「湊のこと、ずっと好きだったんだ」

 その言葉に、胸が強く締め付けられる。

 紗希は涙を堪えながら続けた。

「でも……湊が病気のこと隠して頑張ってたのも、全部知って……私、何もできなくて、悔しくて……」

「紗希——」

 俺はそっと紗希の手を握った。

「ありがとう。俺も……本当はずっと紗希が好きだった」

 紗希の目に大粒の涙が溢れた。

 そして、そっと俺の肩に寄りかかってくる。

「……ねえ、湊。まだ……もう少しだけ、そばにいさせて」

「もちろんだよ。最後の一秒まで、一緒にいよう」

 夜桜の下、そっと肩を抱き寄せたまま、俺たちは静かに寄り添い続けた——。



 こうして俺の『戻った日』の半年間は——ゆっくりと、静かに終わりへと近づいていく。

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