君と紡いだ奇跡の半年



 俺たちは新しい曲作りに没頭していった。

 限られた時間を、一秒も無駄にしないように——。

「サビ、もう少しメロディ跳ねさせた方が良くない?」

 紗希がキーボードを弾きながら提案する。

「確かに。そこからの転調でインパクト出せそうだな」

 真もすぐに反応する。

「……じゃあ、ちょっと合わせてみようか」

 俺はギターを鳴らし、3人の音が重なっていく。

 毎日の放課後が、まるで濃縮された青春のように過ぎていった。

(生きている——まだ、生きているんだ)



 ある日の練習後、紗希がポツリとつぶやいた。

「湊……本当に、奇跡みたいだね」

「ああ。俺も、自分でも信じられないよ」

「きっと、音楽が力をくれてるんだよ」

 紗希は優しく微笑んだ。

「……湊の命を、音楽が延ばしてくれてるのかもしれないね」

 そう言いながら、そっと俺の手を握る。

「まだ……もう少しだけ、この奇跡の時間が続きますように」

「きっと続くさ。俺も、まだ全然諦める気なんかない」

 ぎゅっと紗希の手を握り返した。

 その横で、真がわざとらしく咳払いをしてきた。

「おーい、イチャイチャするのはいいけど、次の新曲案も練ってくれよ?」

「……はいはい」

 俺は照れくさく笑いながらも、心の中は暖かさで満たされていた。



 そして——

 ある日、思わぬ知らせが届いた。

 真がスマホを掲げて駆け込んできた。

「おい! 全国高校生バンドグランプリのエントリー、追加募集出たぞ!」

「え!?」

 紗希も驚きの声を上げる。

「マジで!? あれ、プロも注目してる大会だよな?」

「そう。去年はもう応募締め切りだったけど、今年追加枠が開放されたらしい!」

 俺の心臓が高鳴る。

(まさか、こんなチャンスが——)

 紗希が少し不安そうに俺を見る。

「……大丈夫? 体、無理しすぎない?」

 俺は静かに、でも迷わず答えた。

「やろう。ここまで来たら、最高の景色を見に行こう」

 真も紗希も、すぐに頷いた。

「おう! もう迷わねぇ!」

「うん! ここまで来たんだもん!」

 こうして、俺たちの最後の挑戦が決まった——。
< 18 / 24 >

この作品をシェア

pagetop