君と紡いだ奇跡の半年


 グランプリ出場が決まってからの日々は、今まで以上に濃密だった。

 課題曲の提出、オリジナル曲のブラッシュアップ、映像審査用の収録——

 俺たちは毎日、ギリギリまで音を磨き上げた。

「ここさ、コーラス少し厚く重ねようか?」

 紗希がイヤホンを外しながら提案する。

「賛成。紗希の高音、もっと活かせると思う」

 真が即座に同意する。

「よし、やってみよう」

 俺は何度もギターの弦を弾き直した。

 こうして3人で積み上げる作業が、今はとにかく楽しくて仕方なかった。

(残された時間が奇跡みたいに増えても——それが永遠じゃないことだけは、わかってる)

 だからこそ、一音も妥協したくなかった。



 提出締切の日——

 俺たちは無事に音源と映像を送り終えた。

「よっしゃ……やり切ったな!」

 真が大きく伸びをする。

「ほんとに……全力出し切ったね」

 紗希も安堵の表情で笑う。

 俺は小さく息を吐いた。

「結果はどうあれ、今の俺たちができる最高だったと思う」

 紗希と真が同時にうなずく。

「ここからは祈るだけだな」

「うん……きっと大丈夫!」

 紗希の言葉に、自然と力が湧いてくる。

(まだ、奇跡は終わってない——そう信じたい)



 数日後——

 運命の日がやってきた。

 学校の昼休み、スマホに通知が届く。

【全国高校生バンドグランプリ・最終選考通過通知】

 画面を見た瞬間、手が震えた。

「……湊?」

 紗希が俺の様子に気づく。

「……通った!」

「え!?」

 次の瞬間、紗希が俺に飛びついてきた。

「ほんとに!? ほんとに!?」

「ああ、最終選考に進める!」

 そこに真も駆け寄ってくる。

「マジかよ!! やったぁああああ!」

 3人で抱き合って、その場で叫んだ。

 周りのクラスメイトたちも拍手を送ってくれた。

(奇跡は——まだ続いてくれるんだ)

 涙が滲みながらも、俺は心の底から笑っていた——。
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