過つは彼の性、許すは我の心 弐


 ナオもどんな気持ちで円嘉の話を出したのか。


「あーまだ夜でもアチいよな」

「ねー」


 外に出れば暑い空気が身体に纏わりつく。

 薄暗い田んぼとそれを囲う様に敷かれた水路の近くを歩き始める。


「いつ帰るんだ?」

「夏休み終わる2、3日前には帰ろうかなって」

「そっか」


 Tシャツの襟元をパタパタとするナオを後ろから見つめる。

 背も全然大きいし、背中は野球の為に命掛けれる!と言っただけ筋肉がしっかりと張っていた。

 重労働をしているからそこまで筋肉は落ちていないけれど、その背中は頼りなげで、蜃気楼の様に消えてしまいそうに見えて不安になる。

ーーーナオと円嘉はあの頃誰よりも輝いていた。

 時折り何で2人と私はこんなに違うんだろうと思ったけれど、何だかんだ2人以外の友達がいたお陰で惨めにはならなかった。(明日はその彼等と遊びに行く予定だ)

 それが円嘉の虐めを加速させた所があったみたいだけれど、今も理解出来ない。

 円嘉は死ぬ程私を憎んでいた?

 死ぬあの一瞬前まで私を見つめていた。

 血が私に飛び散って、悲鳴だらけとなった体育館。

 ナオは忘れないで欲しいのかもしれないけれど、忘れる訳ない。

 何をしたって私は忘れられない。

 忘れる訳ない。

 
「じゃあ此処まで」

「いつもいつもありがとうね」

「また、来てくれよ」

「…うん」

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