結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない




次の日はさすがに体のあちこちが痛かった。特に右の太ももと足首が痛む。
コールセンターに出勤予定を入れていない日だったから、彩奈はコンビニでの仕事が終わったら家でのんびりするつもりだ。

九時前に出勤すると、店長が待ちわびていた。

「体調はどう? 井口さん」
「昨日は絆創膏ありがとうございました」

彩奈は肘の辺りにペタリと張った絆創膏を見せる。

「服が汚れなくて助かりました」

服に血がつくと、落とすのに手間がかかるのだ。

「あのお母さん、夜にご主人とお礼に来てくれたんだ。ものすごく感謝してて、井口さんによろしくって」
「男の子は?」

「病院で検査してもらったらしいけど、元気元気。また寄るって言ってたよ」

そこまで言われると、うれしいけれど照れ臭い。彩奈は商品を並べる作業に取りかかった。

お昼の忙しい時間が過ぎたころ、コンビニの前の駐車場に一台の車が滑り込んできた。
黒い乗用車が停止するとすぐに、背の高い男性が降りてくるのが見えた。

(あの人だ)

カウンターの中にいた彩奈は、少し茶色い髪を見てハッとした。たしか昨日「社長」と呼ばれていた人だ。

(まいったな)

富裕層はあまりコンビニに立ち寄らないから、男性が買い物に来たとは思えない。
昨日のことで何か言われるのかと、彩奈は暗い気分になってきた。

「やあ」

「いらっしゃいませ」

思った通り、男性は彩奈に声をかけてきた。
その低くてよく通る声を聞いて、奥で休憩していた店長がわざわざ顔を見せた。

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