結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない

「昨日は失礼した」

「いえいえ、何事もなくてよかったです」

店長はとても丁寧に応対しているが、彩奈はドキドキしていた。

「きみ、念のため病院で診てもらおう」

「え?」

「どこか異常があっては困るからね」

彩奈は男性の声に冷酷な響きを感じた。社長と呼ばれていたのだから、責任ある立場なのだろう。
どうやら彩奈が「ケガをしていた」とあとから言い出して、賠償を求めるとでも思っているのかもしれない。

「大丈夫です」

彩奈は断ったが、店長のほうが気にしている。

「井口さん、念のためだよ。行ってきたら?」

店長にまで言われたら、断れない。彩奈は黙って受け入れることにした。

「じゃあ、仕事が終わってから近所のクリニックに行ってきます。結果はお知らせしますので」
「いや、こちらで準備している」

男性は知り合いの医師がいる病院へ彩奈を連れていくという。

「それは安心だ。井口さん、いってらっしゃい」

彩奈が痛めた足をかばって歩くのに気がついていたのか、店長はホッとした表情だ。

「では、行こうか」

昨日の運転手がサッと後部座席のドアを開けてくれる。
シートに座ろうとしたら、運転手が目礼をしているのがわかった。
まるで「無茶な社長ですみません」とでも言っているかのようだ。

そう言えば、社長だという男性の名前すら彩奈は知らない。


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