結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない



なぜか診察室の中まで、湊斗が入ってきた。東原が担当医に湊斗を紹介すると、昨日の状況を整形外科の医師に説明してくれた。
車の中から見えていたらしく、彩奈がどちらからどのように転んだのか、細かに話してくれるので驚いた。

「---といった具合に、道路を転がったのであちこち痛めているはずです」
「わかりました。診察してみましょう。打った部分を見せてください」

見せてと言われても、腕のすり傷はともかく、痛むのは太ももや腰だ。
今日はコットンのワイドパンツをはいているが、湊斗の前で脱ぐわけにいかない。
彩奈が戸惑っていたら、医師のほうが気がついて声をかけてくれた。

「外でお待ちください」

その声で、湊斗と東原医師が外に出てくれた。

診察に続いて念のためにレントゲンを撮り、骨折はないと断言してもらえた。
軽い捻挫と打撲だから、湿布と痛み止めを処方されて診察は終わった。

ロビーに戻ると、待合室の奥に湊斗の姿が見える。あれからずっと、彩奈を待ってくれていたのだろうか。

「早瀬さん、終わりました。軽い捻挫なので、無理しなければすぐによくなるそうです。診断書が必要なら、受付で伝えてくださいとのことでした」

彩奈が淡々と説明したら、湊斗は「わかった」とひとことだけ。さっき診察室で医師に説明するときの饒舌さがうそのようだ。

支払いをして薬を受け取ったら、彩奈の義務は終わりだ。
そう思っていたのに、湊斗は彩奈を動かさない方がいいと思ったのか会計へサッと歩いていく。

「すみません、お手数おかけします」

この人は見た目よりずっと優しい人なんだと、ひそかに彩奈は思った。


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