結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない



黙って座っていても、立っていても湊斗は注目を集めるようだ。
患者の少ない時間帯とはいえ、会計や薬局の職員は湊斗を呼ぶのではなく、座って待っているところまで来てくれる。
おまけに通り過ぎる女医や看護師たちからの視線が熱い。

まったく気にならないのか、湊斗は無表情のままだ。
その様子を見て、彩奈は(まるで人気俳優みたい)と感心してしまった。

「お会計は」
「気にしなくていい」

「いろいろとありがとうございました」

言われた通り医師の診察を受けたのだから、彩奈は湊斗とはここで別れて仕事に戻るつもりだ。

「では、これで失礼します」

「いや、待て」
「はい?」

「送るよ」

そう言って先に歩きかけたが、立ち止まる。どうやら彩奈の歩調に合わせてくれるらしい。
なんだか断るのも意固地な気がして、彩奈は湊斗の言うとおりにするのが一番だと思うことにした。

もうあれこれ気にしたり、考えたりするのが嫌だった。
守屋総合病院で緊張したまま診察やらレントゲン撮影やらを受けたので、精神的に疲れ切っていたのだ。

(きっと誰にも気づかれていないはず)

乗用車に戻ると、思わず深いため息が出た。

「お疲れでしょう」

彩奈に優しく声をかけてくれたのは、丸顔の運転手だけだった。

「ありがとうございます。どこにも異常はありませんでした」
「それはよかった」

運転手のニコニコと笑う顔を見て、彩奈はやっと肩の力が抜けた気がした。

横に座った湊斗は、車内では無言のままだった。





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