結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
見慣れた風景に戻ってきたら、やっと息がつける。
「コンビニの近くで大丈夫ですから」
彩奈が運転手に伝えると、エッという顔をする。
「家まで送る」
湊斗の声が聞こえたが、彩奈のほうがエッという状況だ。
「いえ、仕事なので」
「店長には休みをもらっている」
「はあ?」
時給がと言いかけて、彩奈は口をつぐんだ。
社長という立場の人に時給の話をしても無駄だと気がついたのだ。
「すみません」
形ばかりのお礼を言うと。彩奈はシートにもたれかかった。
仕方がない。また明日からがんばろうと、気持ちを切り替えた。
休みのことといい、病院に行ったことといい、店長とは前もってあれこれ話をしていたのだろう。
彩奈が病院で書いた住所を覚えていたのか、乗用車はコーポの前の狭い駐車場に着いた。
「着きましたよ」
運転手が降りてドアを開けようとしたが、それより早く湊斗が動いた。なんと彩奈の側のドアを開けてくれたのだ。
「薬をちゃんと飲むように」
「は、はい。ありがとうございます」
車から降りた彩奈が礼を言ってからぴょこぴょこと歩きだすと、湊斗はため息をつく。
「部屋はどこだ」
「あ、二階です」
「何号室?」
「一番奥です」
彩奈が答えると、急に体が浮いた。というより、湊斗の両腕に抱き上げられたのだ。
「ええっ」