結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
とにかく義母が梨乃の結婚を正当化するのに必死なのはわかった。
「取引先の娘かなにか知らないけど、突然現れたあの女に、梨乃は恋人を奪われそうになったのよ」
「はあ」
どうやら相手の男は梨乃に別れをにおわせていたようだ。
だから焦った梨乃はハワイに行って、ソーシャルネットワークを利用してまで結婚をアピールしたのだろう。
もしかしたら守屋徹は気の弱い男で、梨乃のわがままに振り回されたのかもしれない。
「早瀬家の娘が、駆け落ちみたいに結婚したなんて」
父が二度目だったから地味な結婚式だったと、義母は愚痴をこぼした。
せめて梨乃には、豪華な披露パーティーを開きたかったのだ。立派な家柄の男性と結婚させることも夢見ていたはずだ。
ところが駆け落ち同然に家を出て、親に内緒で結婚してしまった。
義母は自分の夢が叶わなかったことで、プライドが傷ついた。
「あの女が現れなければ、梨乃には華やかなパーティーを開いてあげられたのに」
湊斗から見ればどうでもいいことだが、義母は「あの女」に恨みを募らせている。
仕事人間の父より義母のほうが常識的かと思っていたが、梨乃のこととなると人が変わったようになるようだ。
「きっと体で迫ったのよ。それで妊娠したとか言って、無理やり梨乃から徹さんを奪おうとしたんだわ」
義母の怒りはエスカレートして、とうとう作り話を始めてしまった。
「落ち着いてください、お義母さん」
家を出て数年経っていたが、気落ちした父と感情的になっている義母をそのままにしておけない。
その日は何も言わずに実家を後にしたが、湊斗には「真実が知りたい」気持ちと「あの女」に対する疑念のようなものが生まれていた。
父と義母と異母妹の平和だった暮らしは、あっけなく消えてなくなった。
湊斗自身はとっくに家との縁は切ったつもりだったが、こんな形で再びかかわるようになるとは。
実家からの帰り道、少し冷静になりたかったから適当に走るように運転手に指示したが、まさかあんなことが起こるとは思ってもいなかった。