結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「井口さんですか? そうですね、自分のことより相手のことを心配するような子ですよ」
その言葉に、なぜか胸が痛んだ。
さっき聞いた義母の話を、湊斗は自分のこととして受け止めていただろうか。
母親違いとはいえ妹の強引な結婚で、家の中が混乱しているのだ。
(なんとか力になろう)
家を出てから初めて、素直にそう思えた。
それに礼すら言えなかったが、あの女性のケガも気になる。
湊斗の心に、いくつもこれからやるべきことが浮かんできた。
「明日、彼女は出勤してきますか?」
「ええ。九時からの勤務です」
「これからお子さんを病院に連れていきます。彼女のことも心配なので、あとから秘書に連絡させますのでよろしく」
そう伝えて店長に名刺を渡した。
「は、はい。確かに承りました!」
会社名と肩書が書いてある名刺を受け取って、店長は緊張したようだ。
「よろしく」
やらなければいけないことはたくさんあったが、湊斗は明日こそ彼女を医者に連れていくことを決めた。
(彼女に会って礼を言わなくては)
湊斗は母親と男の子を車に乗せて、病院に行くよう運転手に指示を出した。