結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
翌日の午後、店長に約束した通り女性を病院に連れていくことにした。
初めは遠慮していたようだが、後部座席に落ち着くと彼女は自分から名乗ってきた。
「井口彩奈と申します」
「早瀬です」
そう言えば名乗っていなかったなと、名刺を渡した。
しげしげと眺めていたので何か聞かれるかと思ったが、病院に着くまでほとんど口をきかなった。
湊斗の知り合いは自己主張の強い女性が多いのだが、無駄にしゃべるタイプではなさそうだ。
ひとつだけ尋ねられたのは、行先だった。
「すみませんが、どちらの病院でしょう」
「友人が勤めている病院だ」
「ですから、どちらの……」
「守屋総合病院」
偶然だが、湊斗の友人が勤めている病院が梨乃の結婚相手の実家だった。
答え湊斗が病院の名を告げたら、みるみるうちに顔色が悪くなっていく。
具合が悪くなったのかと心配になったので、早く医師に見せようと病院に着くなり友人に連絡する。
振り向くと、車から降りてきた彩奈がよろよろしながら歩いていた。
思った以上に足を痛めているのかもしれない。
支えるべきか迷っていたら、友人の声がした。
高校時代からの気のおけない関係で、職業は違ってもずっといい関係を続けている。
昨日も世話になったばかりだ。
「僕は内科だから整形の先生を紹介するよ」
そう言えば昨日は小児科だったなと思いつつ、東原の案内に従った。