結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「あの、人事部長から女性は長続きしないとお聞きしていたのですが」
「あ、そのうわさを聞いてたか~」
田頭が残念そうな声を上げる。
山本や人見も、ため息でもつきそうな顔色だ。
「このひと月で、井口さんもこの部署の忙しさがわかったでしょ」
「は、はい」
確かにものすごくハードだから、女性社員は体力的に厳しいかもしれない。
中学高校とバレー部で鍛えた彩奈でも、週末には疲れを感じるくらいだ。
基本的には残業できない時代だから、これだけの量をこなすには今以上にスタッフが必要になるだろう。
それも人件費がかかる事案だから、経営的には簡単に増やせないはずだ。
「社長がアレですからねえ」
「そのうえ、アレですし」
「アレ?」
田頭が指を折って数え始める。
「独身、イケメン、御曹司で社長……」
彩奈がポカンとしていると、人見が説明してくれた。
「女性社員は、たいがい望みを持ってしまうんですよ。社長のそばで働いていたら、個人的な関係を望むというか」
「つまり恋人になりたい、結婚したいってね」
そう言って、山本が笑った。
「はあ?」
これだけの仕事をこなしながら恋をする余裕があるなんてすごいなと、彩奈は素直に感心した。
「前任者の方たち、素晴らしいですね」
「えっ」
男性三人は、そろって目をしばたかせた。
「素晴らしいって思うの? 井口さんは」
「だって、仕事も恋も両方がんばろうと思ったら、ものすごくパワーがいりますよ」
彩奈の感想を聞いて、田頭は残念そうな顔をする。
「ああ、どちらも完璧にやってくれたならね」
「大概は、仕事がおろそかになるんだ」
ぼやき始めた時、ふすまの向こうから声をかけられた。
「お連れ様がお見えになりました」
今度は四人の声が重なった。
「え?」