結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
スッとふすまが開いて顔を見せたのは、湊斗だった。
「誰がアレだって?」
「社長⁉」
いつから聞いていたのだろう。湊斗は予定より早く仕事が片付いたから、帰国したそうだ。
会社に寄ったら秘書室に誰もいなかったから、何事かと調べてもらったという。
「新人の歓迎会なんです」
「社長、エクセレント誠さんから秘書室に来てもらった井口彩奈さんです」
あわあわと紹介されたところで、彩奈と湊斗の視線があった。
「井口彩奈です。よろしくお願いいたします」
すぐに頭を下げて、彩奈は視線を外した。
湊斗が気付いたかどうか気になったが、しばらく下を向いたままでいた。
「よろしく」
その低い声を聞くと、彩奈の中に懐かしいような恥ずかしいような不思議な感情をわき起こってきた。
(会えた!)
やっと呼吸を整えて、ゆっくり顔を上げる。
だが彩奈の瞳に映った湊斗は、何の感情も見せない。
柔らかな茶色っぽい髪も、整いすぎている顔立ちも記憶にある通りなのに、感情だけが抜け落ちていた。