結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
彩奈は自分の気持ちに気がついていた。
もともと人目を引く容姿の持ち主だが、会社で働いている湊斗はとてもりりしい。
そのうえエネルギッシュに仕事をこなしていく姿勢には、目を見張るものがある。
起業すれば皆が成功するわけではない。湊斗がこの位置にいるのは、本人の努力のたまものなのだろう。
湊斗が率先して働いているから、社員もついていく。早瀬М&Aパートナーズは若い会社だけに、社内の活気はかなりのものだ。
(でも、仕事だけじゃない)
彩奈は、湊斗があまり見せない優しさを知っている。
ケガした彩奈を気遣って、ふんわりと抱き上げてくれたたくましい腕を知っている。
彩奈は湊斗に恋心を抱いていた。
結婚式がなくなった日からは恋愛とは距離を置いてきたのに、湊斗の近くで働き始めたら世界が変わってしまった。
誰よりも湊斗に認められたいし、役に立ちたい。
秘書はボスのために黒子に徹しなくてはとわかっていても、彩奈のほうを見てほしいと願ってしまう。
(こんな気持ちになる日がくるなんて)
だがこの想いは伝えるわけにいかないし、知られたくもない。
今の自分は、これまで秘書室で働いていた女性と同じではないかと自重する。
彩奈は空港でも、飛行機の機内でも、なるべく湊斗の顔を見ないようにしていた。
そのせいか、羽田から長崎空港までの二時間足らずがとても長く感じられた。