結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない



九州とはいっても、冬の長崎は思った以上に風が強くて、寒さが厳しかった。
もう少し厚手のコートにすればよかったなと思ったくらいだ。

長崎空港は大村湾に浮かぶ海上空港だ。そこから目的の造船所まで、タクシーで移動する。
彩奈はとにかく湊斗とは必要最低限の会話にとどめた。

海岸線に沿って巨大なクレーンが見えてきた。

「わあ」
「迫力満点だな」

これまで見たこともない景色に、彩奈は圧倒されていた。
大きなドックがいくつもある。中にはメンテナンスのために巨大タンカーも入っているようで、湊斗もキラキラした目でじっと見つめている。思いがけず少年のような表情が見られて、彩奈は得をした気分だ。

問題の造船所に着いてすぐ、詳しい資料を見せてもらって話を聞いた。
彩奈は湊斗のそばでそれらを記録に残したり、必要なことを調べたりもする。

ホテルに帰って夕食を取ってからも、あちこちに指示を出す湊斗をフォローして気の抜けない状態だ。
湊斗はわき目も振らずに仕事をしているから、同じホテルに泊まるだの一日中一緒だのと心配しすぎていたのがばからしくなった。

(これは仕事。私だけ意識しすぎてるなんて恥ずかしい)

翌日も同じような状況が続く。

この造船所の社長は、まだ若かった。М&Aという言葉に踊らされ、後継ぎがいなくて経営不振の会社と合併させられたのだ。
最初は湊斗に対しても警戒心を見せていたが、会社の再建に力を貸してくれそうだとわかると協力的になってくれた。

初日よりスムーズに話は進み、湊斗は年明けには社長と東京で会う約束を取り付けた。
湊斗が提案した、広島にある中堅の造船所との合併案に乗り気になったのだ。
再建に向けて、本格的に契約を結ぶことになりそうだ。



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