結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない

話し合いが終わって造船所を出たのは、まだ日暮れには早い時間だった。

市内に向かうタクシーの中で、珍しく湊斗の方から彩奈に話しかけてきた。

「君は長崎は初めて?」

「は、はい」

チラリと時間を確認した湊斗が、タクシーの運転手に「どこか観光地に寄ってくれないかな」と伝えている。

運転手は想定外のルート変更に嬉しそうだ。

「初めての方ならグラバー邸か浦上天主堂あたりでしょうか」

「では、天主堂へ」

「わかりました」

仕事で来たのにいいのかなと思いながら、彩奈は気分が高揚していく。
湊斗と長崎の観光地に行くなんて夢のようだ。

海岸沿いから方向を変えて川沿いにタクシーは走り、十分少々でレンガ造りの大聖堂に到着した。
途中で運転手が解説してくれたが、キリシタン弾圧の歴史や戦争で壊滅状態になるなど、とても重い歴史がある場所だ。
まさに苦難の道だったろうに、一歩中に入ると美しいステンドグラスが厳かに出迎えてくれた。

ここは癒しと安らぎの場なのかもしれないが、彩奈は息苦しさを感じた。

(きれいな教会……)

自分の経験とは比較にならない痛みを抱えている場所なのに、教会というだけであの日の自分が思い出された。




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