結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
ふたり並ぶ姿が大きな窓ガラスに映る。その向こうに夜景が広がっている。
(どうしよう、このドキドキが聞こえてしまいそう)
それくらいの距離にふたりは立っている。そして、じっと景色を見つめている。
言葉もなく、ただ寄り添って。
背の高い湊斗のそばにいたら、やけに彩奈は自分が小さく感じた。
ふと横に立つ人を見上げたら、視線がからんだ。どうやら湊斗はじっと彩奈の顔を見下ろしていたらしい。
「あの」
「君との契約は三月までだったな」
「は、はい」
そのまま湊斗は言葉を見失ったように遠くを見て黙り込んでしまった。
なにが言いたいのだろうと彩奈が待っていたら、ようやく口を開いた。
「うちの社員になる気はないか?」
社長自ら声をかけてくれるのは、彩菜にとってうれしいことだ。
だが、このまま湊斗のそばにいるのは危険だと彩奈は知っている。
これまでの秘書が長続きしなった理由が、彩奈にもわかっていた。自分も、彼女たちと同じ道を歩んでいる。
湊斗が一番大切にしているのは仕事で、秘書との恋愛ではない。どんなに好きになっても、手の届かない人なのだ。