結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「まだ仕事が残っているのか?」
「今、終わったところです」
「じゃあ、支度して」
「え?」
彩奈が戸惑っていたら、湊斗はドアにもたれてじっとしている。
「あの……」
その時、人見主任が戻ってきたが、湊斗の姿を見て目を見開いている。
それくらい秘書室に湊斗がいるのは珍しいことだった。
「社長、なにかご用でしょうか」
「いや。もう仕事は終わったようだから、井口さんを借りるよ」
「わかりました。井口さん、急いでお供して」
「は、はい」
これも業務命令かと、彩奈はバッグを持って立ち上がった。
「コートは?」
「あの、ロッカールームに置いています」
「じゃあ、ロッカーに寄ってから地下の駐車場に来るように」
そう言い残して、湊斗は秘書室を出て行った。
人見主任に挨拶をして、彩奈はロッカーへ急いだ。
「借りる」という湊斗の指示がわからないらしく、人見主任も「社長のこと頼むよ」とだけしか言わなかった。