結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
地下に降りたものの、どこに湊斗がいるのか見えなくて彩奈は立ち尽くしていた。
(どうしよう)
地下の駐車スペースは広いし、来客の送迎や役員との外出でも正面玄関しか使わないから彩奈にはなじみのない場所だ。
困っていたら、一台の車がすべり込んできた。
「乗って」
てっきり井上が運転する社有車で出かけるのかと思っていたら、湊斗個人の車らしい。
「はい」
後部座席のドアを開けようとしたが、ロックされている。
「こっちだ」
どうやら助手席に座れということらしい。
迷ったが、待たせても申し訳ない気がして彩奈は乗り込んだ。
「失礼します」
車は静かに走り出した。
「どちらへ?」
湊斗は沈黙したままだ。
地上へ出てしばらく走ってから、やっと湊斗が口を開いた。
「お疲れ。ここからは、お互い仕事を忘れよう」
「はい?」
「社内での上下関係はなしだ。早瀬湊斗と井口彩奈として話したい」
どうやら社長と派遣社員という立場ではなく、個人的な話がしたいということらしい。
先日も湊斗が口にしていた、派遣期間が終わってからのことかなと脳裏をかすめる。