結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
彩奈はよろよろしながら、なんとか寝室に戻った。
(これは夢だ)
どこからどこまでが夢なのか、すべてが悪夢なのかわからない。
頭の中はさまざまな考えでごちゃごちゃだったが、彩奈の行動は早かった。
湊斗の話をきちんと聞いて、自分のことも話すべきだと理性は告げてくる。
でも、そうする勇気は彩奈にはなかった。
結婚式のあと、自分を責め続けたときと同じ気持ちだ。
やはり彩奈が家のための結婚を受け入れなければよかったのだ。巡り巡って、みんなの心を傷つける。
梨乃の母は今でもあんなに怒っているし、それを聞かされる湊斗はどんな気持ちだろう。
(湊斗さんのそばにいちゃいけない)
たとえどんな理由があったにしても、梨乃の幸せを壊しかけたのは間違いない。
義母が言っていたように、湊斗が愛しているふりをしているなら彩奈は立ち直れそうもない。
彩奈は本気で湊斗のことが好きになっていたからだ。
とにかく、梨乃の家族と関わりを持ってはいけない。湊斗を愛してはいけない。
その気持ちだけが彩奈を支配した。
(ごめんなさい)
湊斗を好きになった気持ちにうそはないし、同じ気持ちだと信じたい。
異母妹のことがあったとしても、彩奈を選んでくれたと思いたい。
(でも、もう会わない方がいい)
荷物をまとめる手を動かすことを止めたら、泣いてしまいそうだ。
湊斗が義母を送って帰って来るまでに、ここを出よう。
その思いだけが、千々に乱れる彩奈の気持ちを支えていた。