結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない


翌日の昼過ぎ、誠子がペンションにやってきた。いつも通りのピシッとしたスーツ姿だ。
そのいでたちから、大阪か京都での仕事の途中に寄ってくれたのだと思った。

「お久しぶりです」

「会いたかったわ~。久しぶり」

彩奈は今でも一応、エクセレント誠からの派遣社員の扱いだ。
定期的に報告もするし、オンラインでの会議に出ることもある。
だが実際に誠子と顔を合わせるのは一年ぶりだった。

「海里君は?」
「今、お昼寝なんです」

「残念、顔が見たかったのに」

「もうすぐ起きてきますよ。今日は大阪でお仕事なんですか?」
「そうなの。大阪支店管轄の仕事が増えているから、京都か神戸に支部を置こうかと思って。その準備よ」

誠子は着々と会社を大きくしているようだ。

「それに、どうしても彩奈と話したかったの」
「私と?」

誠子はバッグから白い封筒を取り出した。

「お母さまからお手紙を預かってきたわ」

母には家を出てからも、どこに住んでどんな仕事をしているか、ずっと連絡はしてきた。
そして妊娠して、ひとりで子供を産んだことも伝えている。
母は驚いていたが、なにしろ子どもの父親の名を伝えられないのだ。出産してからは、少しばかり距離を置いていた。

「母が誠子さんに手紙を?」

わざわざ手渡しで頼むなんてと、嫌な予感がしつつも彩奈は手紙を読んだ。

「これは……」

母からの手紙は、父が倒れたという知らせだった。
命のかかわるほどではなかったが、車イスでの生活になったため井口病院の院長を引退する予定だという。

「元気だとばかり思っていたのに……」

手紙を持つ彩奈の手は震えている。

「お父様は、彩奈が心配するから伝えなくていいっておっしゃったらしいわ」
「そんな」

無理に守屋徹と結婚させようとしたことを、今でも両親は悔やんでいるのだろう。








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