結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「社長、そろそろお時間です」
会議の時間だと山本室長から声をかけられたので、湊斗はパソコンを切ってから立ち上がった。
社長室から一歩出たところで、スマートフォンにメッセージが届いた。
エレベーターに向かって歩きながら確認すると、珍しく東原医師からだった。
【近いうちに時間を取ってくれ。会って話したいことがある】
会って話したいほどの、特別な事情がありそうだ。
山本にスケジュールの確認をしてもらうと、夕方が空いているのは来週の火曜日しかない。
それを東原に連絡すると、都合を合わせてくれるという。忙しい東原に申し訳なかったが、時間と場所を連絡をした。
***
東原と約束した日、湊斗が指定したのはいつか秘書室のメンバーが集まっていた和食の店だった。
個室があるから話がしやすいと思ったのだが、店についてすぐに失敗したなと感じていた。
思い出のある場所は、どうしても記憶が刺激される。
しまいこんでいた彩奈のことが、いくつもよみがえってくる。
まじめな顔、ツンとした顔。笑った顔や湊斗の腕の中で甘える表情。
そして耳に残る柔らかな声までが湊斗の心を揺さぶった。
たまらず東原が来るより先に、飲み始めてしまった。
「待たせた」
「いや、すまない。先に飲んでた」
連絡は取りあっていたが、実際に会うのはずいぶん久しぶりだ。
どうやら東原は、少し太ったようだ。
「貫禄がついたな」
「そう? 運動したほうがいいかな」
からかうと、人のよさそうな笑顔で答えてくれる。学生時代と変わらないホッとする顔だ。
料理を頼んですぐに本題に入ろうと思ったが、東原は近況報告のようにのんびりと話し始める。
「実は、守屋総合病院から勤務先が変わったんだ」