結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない


「へえ。どこに?」

「守屋の分院、井口病院だ」

その名を聞いて、湊斗の表情が変わったのが東原にもわかったのだろう。

「井口彩奈さんのお父さんの病院だ」

「ああ……」

急に黙り込んだ湊斗を気遣いながら、東原はひとりごとのように話し始めた。

「井口彩奈さんの名前は、お前が病院に連れてくる前から知っていた」

守屋総合病院に勤めていた東原は、そこの長男の悪評も聞いていた。女性遍歴が華々しいのだ。
実際に内科の看護師が「恋人だと思っていたのに急に捨てられた」と言って泣いていたのを見ている。

そんな長男を心配したのか、両親が絶対に断られることのない縁談を用意した。
その相手が、井口病院の院長の娘だ。

「これは極秘情報だった。たまたま院長がぽろっとこぼしたから僕は知ってたけど、病院を提携するための生贄みたいだなって思ってたよ」
「そうだったのか……」

徹と梨乃のとんでもない騒動で病院内が騒然としていたところに、湊斗が平然と井口彩奈を伴って来たから驚いたと言う。

「お前、彩奈さんが守屋徹と縁談があったなんて知らずに連れてきたんだろう」
「ああ」

守屋総合病院に行くと言ったら、彩奈は顔色を変えていた。
おそらく行きたくなかったはずだ。
知らず知らずのうちに彩奈を傷つけていたと知って、また湊斗は悔やむ。


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