結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「この前井口家に行った時、彩奈さんに会ったんだ。院長のベッドのそばで遊んでいるこの子を見て驚いたよ。院長夫人に聞いたらお孫さんだった。かわいいから写真を撮らせてもらったんだ」
東原がわざわざ呼び出してまで見せてくれた意味に湊斗は気がついた。
「まさか」
「おそらくこの男の子は彩奈さんの子だ。身に覚えはないか」
覚えがありすぎて湊斗は息をのんだ。彩奈のところに行かなくてはと、すぐに立ち上がる。
「落ち着け。もう夜だ」
東原に言われて湊斗は座りなおした。
両手で顔を覆って冷静になろうと試みるが、こめかみのあたりをドクドクと流れる血を感じるだけだ。
この血があの男の子にも流れているのかと思うと、居ても立っても居られない。
「なにか事情があるとは思っていたが、事実だけは知らせておきたかった」
「ありがとう」
おそらく東原は、あまりにも湊斗にそっくりだから半信半疑ながら写真を撮ったのだろう。
目の前の湊斗の慌てぶりを見て、男の子の父親だと確信したはずだ。
「ありがとう、東原」
感謝の言葉しか浮かんでこなかった。もし東原が気づいてくれなかったら、湊斗は自分が父親になっていたことすら知らないままだった。
「ひとつ貸しな」
「ああ。めちゃくちゃ大きいよ」