結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
翌日。朝から仕事に集中しようとしても、頭の中には男の子の姿がよぎる。
三歳くらいだろうか。彩奈とふたり、いままでどこにいたんだろうか。
知らせてくれなかった彩奈への怒りはない。おそらく妊娠したことを伝えられないくらい、湊斗のことを信頼できなかったのだろう。
ひとりで産んだのか、金銭的な不自由はなかったか、今の湊斗にはふたりへの心配しかない。
「社長」
「ああ、すまない。続けてくれ」
堂々巡りの考えを頭の隅に押しやって、営業部長からの報告に気持ちを戻す。
東原から男の子の写真を見せられた湊斗は、父の会社のМ&Aに取りかかることを決めた。
(俺には息子がいた)
東原からの話は衝撃的だった。
だが気持ちが落ち着くとすぐに、彩奈のため息子のために何が出来るのかを考えた。
一番にやらなくてはいけないのは、湊斗自身が早瀬家から離れることだ。
梨乃の異母兄と言う関係は消せなくても、早瀬家との関わりは最低限にしたい。
そのために早瀬М&Aパートナーズの社長であり早瀬電子の長男として最善だと思う方法を伝えなくてはならない。
父は湊斗に社長を継いでもらいいと希望しているが、それはできない。
梨乃と結婚した守屋徹は今でも定職にも就いていないから、とても早瀬電子を率いる力はない。
そこで考えたのは、カリフォルニアにある会社との合併だ。社長はアメリカから迎えればいい。
会社も大きくなるし、世界市場に出ればより大きな仕事ができるはずだ。
父はすんなりとは合併の話を受け入れないから、時間はかかるだろう。
だが彩奈を迎えに行くために、過去とは決着をつけなくてはいけない。
彩奈と男の子を迎えに行くことが、湊斗のすべてになっていた。